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岩の上に家を建てる




「岩の上に家を建てる」という有名なキリストの言葉がマタイの福音書7章にあります。キリストは、「わたしのこれらの言葉を聞いて行う者は皆、岩の上に自分の家を建てた賢い人に似ている」と言われました。「わたしのこれらの言葉」というのは、この前に語られたキリストの山上の教え全部を指します。山上の教えの中心は、「人間にとって本当の幸せとは何か」です。キリストが説かれた、人間が幸せになる道を聞いて、実行する人は賢い。その賢さは、岩の上に自分の家を建てた人のようだということです。では岩の上に自分の家を建てる人はなぜ賢いのでしょうか。


 岩の上に家を建てるというのは、文字どおり岩の上に建てることではありません。固い地盤の上に杭を打ち込み、それを土台として家を建てるということです。建物を造るとき、基礎の土へ埋め込む深さのことを専門用語で根入れ深さ(ねいれふかさ)と言います。地盤面の高さから、基礎の下の端までの距離のことです。「根入れ深さは、できるだけ深い方が望ましい。根入れ深さが浅いと、地震や台風などの災害時に、構造物が移動·転倒する恐れがあるからだ」と言われています。土壌が柔らかい場合は、固い岩のような地盤に達するまで深く掘っていきます。そこを建物の基礎とするわけです。これは現代の建築学でも常識になっています。


高い建造物を建てる時は、地中の深いところにある固い地盤に達するまで杭を打ち込みます。これを杭基礎と言います。マレーシアの首都クワラルンプールにペトロナスタワーという高さ452mのツインタワーがあります。ペトロナスタワーの地下に埋められたビルの土台の深さは118mにも及びます。高さ何百メートルにもなる高層ビルを作るには、まず堅固な土台をつくらなければいけません。地下の深い所に堅固な土台を作って、地上の高い高層ビルを支えなければいけないからです。建物を建てるとき土台がいかに大切かわかります。


 「岩の上に家を建てる」と反対の言葉が「砂の上に家を建てる」です。砂上(さじょう)の楼閣(ろうかく)という言葉があります。崩れやすい砂の上に建てられた楼閣は、基礎が不安定なのですぐに崩れるという意味です。大きな岩は指で突こうが、手で押そうがビクともしません。しかし、砂は指で触るだけで、動いてしまいます。風が吹いて来たら飛ばされてしまいます。洪水が来たら流されてしまいます。「砂」は何かあるとすぐに変わってしまうもの、なくなってしまうものを象徴しています。自分の考え、世の中の価値観、お金、名誉、地位などがそうです。このようなものに人生を土台を据える人は愚かだとキリストは言っておられるのです。


 キリストの教えを聞いて実行する人は、岩の上に自分の家を建てる賢い人に似ていると言われていますが、実はキリストの教えの全ては、旧約聖書39巻と新約聖書27巻のすべてを凝縮したものです。自分を愛する、隣人を愛する、両親を愛するなどの教えは聖書にあります。キリスト教信徒でなくても、これらの教えを聞いて実行するならば賢く、そしてそれらを実践して生きる人は幸せな人生を歩むことができるのです。


ロサンゼルスぶどうの木国際教会 

牧師 上野五男


*ラフ新報2016年7月の記事から

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