コテコテ関西弁トーク第11回 (2002年8月リバイバル新聞に連載)
上野五男牧師
えらい怒られて、またまた放浪の旅や。
ラジカセとマイクとトラクトを持って、歌える場所を探して、ススキノの町をさまよう流れ者たち。
まさに演歌の世界やで。
時計を見たら、もうすぐ11時。
「もうそろそろ、ひきあげましょうか」という声がかかるかなと思っていたけど、この伝道師の先生とフィアンセ、それに聖書学院の学生さん、なかなか根性あるで。
「センセー、さっきの中心街の交差点、空いてるかもわかりません。もう一回、行きましょうか」てなわけで、テクテクと歩いていった。
人通りは相変わらず多い。
酔っぱらいのおっちゃんが気持ちよさそうに千鳥足で歩いていく姿があちこちで見られるようになってきた。
しばらく行くと、派手な化粧した超ミニのお姉ちゃんたちが、ギラギラと輝くネオンのお店の前に立ってる。
演歌牧師はドキッとして思わず見てしもうたで。
そんな素振りを悟られないようにして、「すごいお姉ちゃんらがおりまんな」と夜空を見上げてさりげなくつぶやいた。
そんな姉ちゃんたちに目もくれず、人混みをかき分けてスタスタと歩いていく伝道師の先生たち。
キョロキョロしてて置いて行かれたらえらいこっちゃ。
ちょっと待ってえなー。
おいていかんててえな。
中心街の交差点に着いたら、まださっきのええ場所は空いてへん。
売れん演歌歌手が、まだ頑張って歌ってるやないか。
しゃーないから、横断歩道を渡って、反対側へ移動。
「センセー、このへんでどうでしょうか」と言われて、早速「神は愛ぃですー」と歌い出した。
すぐそばを歩いている人が驚いて振り向いた。
そらびっくりするわな、急に耳のすぐそばで演歌やられたら‧‧。
3メートルぐらい離れた所で、小さな机を置いて椅子に座って客待ちしていた占いの女性が、こらアカンてなわけで、どっかへ行ってしまった。
伝道師の先生たちは、一生懸命にトラクトやチラシを道行く人たちに配ったはる。
そのうちに、ほろ酔い加減のおじさんがトラクトをもらって、聖書学院の学生さんとなにやら話し始めたんや。
まさに路傍個人伝道の始まりや。
こっちも、援護射撃をせなならん、と思うて、いつもよりこぶしをグッときかせて「信じてみるわ」を歌うたで。
「お金のことしか見えない私、人のうわさも気に留めず、自分で自分をダメにして、世間が悪いと人のせい。‧‧あなた一人が神ですか。あなただけを信じるだけで、こんな私も罪な私も赦されるのですね」
ふと、夜空を見上げたら、ネオンの合間から見える星が瞬いていた。
ゴスペル演歌を夜空に響かせて、札幌の夜はだんだん更けていったんや。
Opmerkingen